GRIMP JAPAN 2025 “想定”に込めた現場への想い

自分たちで選定・持ち込んだ資器材を使い、初めての場所で、その場で示された救助想定に対応する。
GRIMP JAPAN 2025で行われた一連の活動は、まさに現場そのものといえるものでした。

よりリアルに“現場対応”を感じてもらうため、私たちは各シナリオに多くの想いを込めました。三日間を通して多様なスケールとロケーションを用い、変化に富んだ救助想定を展開。ロープレスキューが単なるロープの技術ではなく、さまざまな事故への対応手段の一つであることを体感できるよう、複合的な設定と構成にこだわりました。

たとえば──
・転落事故車両に対する油圧救助器具の使用
・脊柱固定器具を用いた傷病者搬送
・酸欠事故を想定した空気呼吸器の使用
・暗所での作業
・鉄塔上での狭隘空間活動
・複数要救助者への同時対応
・ボートを用いた水辺での救助活動

「これは本当に現場だ」と、多くの声が寄せられたとき、私たちがこの想定に込めた意図が報われたと感じました。

GRIMP JAPANは第1回大会から、毎回内容を見直し、細部までアップデートしながら成長してきました。
「同じことを繰り返さない」こと。「今の現場に本当に必要な内容か」を問い続けることが、私たちの姿勢です。

今大会の大きな挑戦のひとつは、「タイム点の廃止」でした。
日本ではかつて「ロープレスキューは時間がかかる」「遅い」といった認識がありました。その意識を変えるために、あえてタイムを競わせてきた時期もありました。その成果として、日本のロープレスキューは今や世界でもトップレベルのスピードを誇っています。

しかし、次に進むべきフェーズは「速さ」ではなく、「安全」や「シンプル」――つまり質の高さ
必要以上に時間を追い求めるのではなく、「要救助者のために何を優先するか」という視点で、現場対応力そのものを問う構成へとシフトしたのです。

さらに私たちは、GRIMP JAPANを「すべてを達成することが目的の大会」にはしていません。
用意された想定を順番にこなすのではなく、さまざまな現場が次々に発生する中で、全体を俯瞰し、効率よく、チームとして機能することの重要性を体感してほしいと考えています。
「現場は簡単じゃない」――この想いが根底にあります。

そうした中で、今大会では私たちの想定を上回る結果が出ました。
三日間・計13想定すべてを救出完了したチームが、24チーム中9チーム。全体の平均救出率は86%
この数字は、日本、そして世界のロープレスキューが確実に成長していることを力強く示すものとなりました。

あなたは、これらの事故に対応できますか?
あなたなら、どう動きますか?

訓練で経験していないことは、現場ではできません。
訓練で経験していないスケールには、対応できません。
だからこそ、大きなスケールを経験することが、小さなスケールを落ち着いて乗り越える力となるのです。

GRIMP JAPANの想定は、単なる競争のためのものではありません。
あなたの現場、あなたの未来に生かすための“準備”です。

「できない」を「できる」に変えていきましょう。
「想定外」を「想定内」にしていきましょう。

🎈You go! We go!🎈

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