ROPESとは?

GRIMP JAPAN ロープレスキュープロジェクト

GRIMP JAPANは、消防・警察・海上保安庁などの救助機関を対象に、ロープレスキュー技術の標準化を目指すプロジェクトです。

2024年7月にはLevel 1 プレコースを、9月には第1回正式コースを兵庫県にて開催。さらに同年、全国の複数の消防学校の専科教育(救助科)においても、本カリキュラムに基づいたコースが実施されました。

このロープレスキューコースは、実践的かつ体系的な内容で構成されており、受講者には修了証が発行されます。

今後は2025年以降、中部・関東エリアでの開催拡大に加え、より高度な内容を扱うアドバンスコースとしてLevel 2コースの開設を予定しており、日本国内におけるロープレスキュー技術のさらなる普及・向上を目指してまいります。

概要

ROPES(Rope Of Passion, Evolution and Skills)は、
「ロープレスキューへの情熱は、新たな技能の進化を生み出す」
という理念のもとに命名された、GRIMP JAPANが推進するロープレスキュー技術の標準化プロジェクトです。

本プロジェクトは、災害現場や特殊救助活動において必要とされる高度な応用技術の習得を目的とするのではなく、あくまで“基本的なロープレスキュー技術”を確実に身につけ、その技術を全国で統一・標準化していくことを目指しています。これにより、日本全体のロープレスキュー能力の底上げを図りたいと考えています。
近年、毎年のように発生する自然災害や特殊な事故が発生し、さらには国内法に基づく高所作業の安全基準が厳格化されるなか、これまでの技術体系だけでは安全性を十分に確保できない場面も増えてきました。ROPESは、これらの課題に対応し、より安全・確実・迅速な救助活動を可能とするための技術的進化を促すプロジェクトでもあります。
この「変化」は、これまでの技術や伝統を否定するものではありません。むしろ、日本の救助活動の歴史と現場の経験を尊重し、その蓄積の上に築かれる“進化”であると、私たちは考えています。
GRIMP JAPANは、ROPESを通じて日本のロープによる救助技術がさらなる成長を遂げ、あらゆる現場で求められる技術水準に対応できるよう尽力してまいります。

項目 内容
開催時期 レベル1(ベーシックコース):年間4回程度
レベル2(アドバンスコース):年間2回程度
※開催日については決定次第 HP 等でアナウンス
開催場所 令和7年度は兵庫県・栃木県・三重県の3ヶ所で開催
定員 24〜36名(開催場所の施設によって変動)
受講料 15,000円

カリキュラム内容

Level1-2日間コース

座学 ロープレスキューの考え方
PPE・チーム装備 国内法にも準拠した資機材とは
結索・アンカー作成 Level1で使用する結索・アンカー
ロープアクセス Level1で実施する昇降・エッジ通過・バディレスキュー
倍力システム(MA) 倍力理論説明、2倍力・3倍力・5倍力
システム説明 DMDB(100:0)TTRS(50:50)説明展示
担架出し入れアテンド要領 要救助者を収容した担架のエッジ通過
低所高所救出要領 ベーシックな低所高所救出要領の展示説明
想定訓練(scenario) 各小隊に分かれて想定訓練を実施
効果確認 事前配布50問のうち20問の効果確認

座学

この座学では、ロープレスキューの過去・現在・そしてこれからを歴史的な背景とともに振り返りながら、今後の日本におけるロープレスキュー技術の進むべき方向性について、受講生の皆さんと共に考えていきます。
かつてのロープ救助技術は、現場の経験や個人の工夫によって発展してきました。しかし、現代において救助活動を取り巻く環境は大きく変化しています。災害の多様化・複雑化、法令や安全基準の整備、高所作業に関する労働安全衛生の厳格化――これらに対応するには、従来の技術体系だけでは不十分です。
このような背景から、今あらためて「基本に立ち返ること」「技術を標準化すること」の重要性が強く求められています。
ただ技術を身につけるだけの場ではなく、『日本のロープレスキューがこれからどこへ向かうべきなのか』というテーマを、現場を担う参加者と共に描いていくための“対話”と“学び”の場となるカリキュラムコース開始前の対話の場です。

PPE・チーム装備

このスキルステーションでは、個人装備であるPPE (Personal Protective Equipment)
と、チームでの救助活動において使用するチーム装備についての説明を行います。
その後、小隊ごとに受講生自身が装備の点検・確認を実施することで、装備に対する理解と適
切な使用への意識を高めていきます。
正確な装備の選定・点検は、安全で効果的なレスキュー活動の基礎であり、個人の責任とチー
ムの信頼性の両方に関わる重要なスキルです。

  • フルハーネスの着装
  • 昇降器具・墜落制止用器具の説明
  • チーム資機材の展示・説明
  • PPE 説明の様子

    チーム装備説明の様子

    各小隊で2 日間使用するチーム装備の点検を実施する

    結索・アンカー作成

    このスキルステーションでは、これからのロープレスキューにおいて最低限習得しておくべき結索技術およびアンカー作成の基本要領について、インストラクターが実演を交えながら説明を行います。
    その後、受講生は小隊ごとに分かれ、実際に結索およびアンカーの作成を繰り返し実施しながら、理解と技術の定着を図ります。
    正確で確実な結索と安定したアンカーの構築は、ロープレスキューの安全性を支える基礎であり、すべての活動の土台となる重要な要素です。

    結索受講生実施の様子

    アンカー作成展示の様子

    アンカー作成受講生実施の様子

    ロープアクセス

    このスキルステーションでは、平成28 年および31 年の法令改正により、救助活動において必要となったロープ高所作業(ロープアクセス)の基本手法について、インストラクターが救助活動の実情に即した形で展示・説明を行います。
    その後、受講生は実際にロープアクセスの基本操作を実施しながら、技術の習得を図ります。
    ロープアクセス技術は、従来のロープ救助とは異なる安全管理の考え方や動作手順を持ち、法令を遵守しながら安全かつ効率的な救助活動を行う上で不可欠な手法です。
    その基礎を正しく理解し、正確に運用できることが、現場における信頼と安全につながります。

    講師が展示説明する様子

    受講生が実施する様子

    倍力システム(Mechanical Advantage)

    このスキルステーションでは、低所救助、中州救助(テンションライン)斜面での救助など、さまざまな現場で不可欠となる倍力システムについて、その理論的な基礎作成方法を、インストラクターが展示・説明します。
    説明の後、受講生は実際に低所からの引き上げ操作などを通じて、倍力システムの構築・運用を体験し、技術の理解と習熟を深めます。
    倍力システムは、少人数での効率的な救助活動を可能にする重要な手法であり、安全性と作業効率を両立させるために欠かせない基本技術です。
    正しい構成と使用方法を習得することが、現場での確実な運用につながります。

    システム説明(低所からの引き上げ、高所からの降ろし)

    このスキルステーションでは、低所救助、高所救助、中州救助(テンションライン)、斜面での救助など、さまざまな救助活動において必ず使用される「メイン&ビレイシステム」について、インストラクターがその理論的背景と構成方法を展示・説明します。
    説明の後、受講生は小隊ごとに分かれ、実際にメインラインおよびビレイラインの構築・操作を行いながら、現場で求められる安全確保技術の習得を目指します。
    このシステムは、チームレスキューを実践するための基本かつ中核的な技術であり、正しい理解と正確な運用が強く求められます。
    本ステーションでは、その基礎理論から実践的な運用までを体系的に学びます。

    担架出し入れアテンド要領

    このスキルステーションでは、低所救助、高所救助、中州救助(テンションライン)、斜面救助など、さまざまな救助活動において、担架に収容された要救助者に付き添い、容態の観察や障害物の回避などを行いながら、安全に救出ポイントまで搬送するための技術、「アテンド」について、その要領をインストラクターが展示 ・説明します。
    また、高所および低所救助で高取りアンカーが作成できない場合に必ず発生する担架のエッジ通過について、その理論と具体的な手法を解説します。
    説明後、受講生は実際に担架の出し入れおよびアテンド操作を実施し、エッジ通過も含めた安全搬送技術の習得を図ります。

    低所高所救出(Team Rescue)

    このスキルステーションでは、救助活動におけるTeam Rescueの基本として、

  • 低所救助(低所からの引き上げ)
  • 高所救助(高所からの降ろし)
  • の両方について、説明と実技を行います。
    また、救助現場においては、壁面がある場合と壁面がないオーバーハング状況の両方が想定されるため、これら2つのシチュエーションにおける技術の違いと注意点についてもインストラクターが展示・説明します。その後、受講生は小隊に分かれて、実際に各種救助方法を体験し、基本動作とチームワークの習得に努めます。

    想定訓練(scenario)

    これまでのスキルステーションで学んだ知識と技術を基に、各小隊に分かれて想定訓練を実施します。ROPESでは、大規模災害発生時を想定し、1つの訓練サイト内で複数の事案に同時に対応する状況を再現します。
    訓練は、出動から救出完了報告までの一連の流れを実践的に行うことで、よりリアルに現場活動を意識するようにし、現場対応能力の向上を目指します。想定訓練終了後には、各チームで振り返りの時間を設け、担当スタッフからの講評を受けることで、課題の共有と技術のさらなる向上につなげます。

    効果確認

    事前に配布した50問の問題の中から20問を抜粋し、受講生に解答してもらいます。ROPESでは、技術だけでなく知識も重要であると考えており、「知識と技術は表裏一体である」という理念のもとで活動を行っています。後日、全問題の回答および考察を作成し、受講生に共有します。これにより、すべてを現場で体験するのではなく、知識として蓄積し、経験値として持ち帰ってもらうことを目指しています。

    修了証交付

    2日間のカリキュラムを修了した受講生に修了証を発行します。